借りた車 シーン3

 彼女を汚さないよーに気を付けながらランチを頬張る。
風が気持ち良い、・・ここ神戸は、海から山を観ると夜になれば
「KOBE」の文字と神戸の市章と錨のデザインが六甲さんに灯ります
このライトの電力は、この近くにもうけられた風力発電による物で
ここの道沿いでクルクルと働いています。
 喉に詰まりそうになったハンバーガーをコーラで流し込む、
「休日のサラリーマン、ハンバーガーで窒息死!」という夕刊フジ
の見出しは、なんとか避けられた。
 そんな、記事にもならない事を心配しながら最後のポテトを
口に放り込む。

 しっかり手をふいて、油を落とす、手が滑って谷底へ・・・
なんて情けないのは、避けたい。「休日のサラリーマン・・

 イングニッションキーを回し彼女を起こす。機嫌は・・良い!
鼓動が落ち着いてからリバースレンジにギアを入れゆっくりとバック、安全を確かめてDレンジに放り込んでゆっくりと踏み出してゆく、木漏れ陽の間をすり抜けるように軽快に走ってゆく、西に視界が開けた、かなりきついUターンが二つ、この先に先程の風力発電機が設置されている。

 ここからは、ほとんどの左カーブはブラインドコーナー、
カーブミラーを確認して鼻先を内側ぎりぎりに切り込んで行く
ハンドルは、重たいが切れ味は良い、サスも踏ん張りが良い
タイヤも食いついてくれる。
 
 相変わらず道は、狭い、狭いながらの楽しみ方は在る物で
センターラインを超えないように徐々にスピードを上げていく
といったって、狭いしコーナーはタイトだし直線(ほとんどない)で60キロも出れば、良い方だ。

 木々の間から覗く神戸の街や港が遠くのものに感じられてきて
不思議な感覚が僕と彼女を包み込む。

 しばらくそんな道を楽しんでいると石積みのガードレールが
現れコーナーを抜けると突然開けた場所に飛びこんでゆく、
唯一アクセルを踏み込む事の出来る場所だ・・でも今日はあえて
ゆっくりいってみよう。
 左手には、外人墓地の入り口があり、違った意味で神戸らしい
所だ、最近は若者が夜ここを訪れて、あまりお行儀宜しくない
らしく、今では、夜の訪問に制限があるらしい。
 噂でここに幽霊がでるというような話もあるらしい・・・

 ここらあたりから右側が六甲森林公園になっている。
タイトに曲がりくねった道が続きステアリングは、大忙し
彼女はと言うとやっぱり欲求不満気味、「そういうなよ、
踏み込んだら二人仲良く谷底行きなんだから・・・」
そんな独り言?を言いながら車は、少し西に向っている。
いくつかのコーナーに中にその外側に広い畑が見える、
右コーナーがある。
 ここは、新神戸駅の上に在る「ハーブ園」で使ったりする
ハーブの栽培畑なのだ。
 タイム・セージ・ローズマリー・ラベンダーなどの代表的な
ハーブも何種類もの品種を育てては、ハーブ園に運んでいるそうだ
 ここの親父さんに聞いた事が在る「ラベンダーの中で
好きなのは、イングリッシュラベンダーだが、育てるのが難しい
大きくなって立派に花が咲いた時の香りは、言葉に尽くせない」
って、手の掛かる娘ほど・・・
 そこからしばらく行くと六甲の縦断道に続く、右に進路を取り
森林公園のメインゲートを右手にアクセルを踏み込んでゆく、
ほんの暫くだけの直線V8の響きが心地良い、そう浸っている時間
も一瞬だけ、すぐに左ターンからワイディングが始まり、ここから
また大人のダンスを楽しむ。

 きついコーナーを一つ、二つと切り込んでゆき、左に開けた
90度コーナーほんの少しの直線、続いて緩やかな右コーナー
、ここが曲者(コーナーだけに曲者?)オーバースピードで
少しでもアウト側にラインをとると逆バンク気味のこの道の
罠にはまってしまう。いつもより5センチアウトよりのライン
いつものように踏み込めない、いやそれどころかじりじりと
リアが流されている。こんなときは、無理をせず流れに任せて
みるものだ、コーナーを出た・・ここまでのほんの僅かな時間に
信じられないくらい頭が回転している。

 ここは、今バイクの「峠族」のメッカでも在る。先ほどの
再度山ドライブウェイがバイク全面禁止になっている為でもある。
 丁度、一台後ろについて来た、珍しいバイクだ「トライアンフ」
「MI-2」でイーサンが乗った黒い方と同じだ。軽めの服装だが
コーナーも安定した感じでバックミラーに映る彼のコーナーを出て
加速する姿がきまっている。左のブラインドコーナーを出て
直線、次ぎの右コーナーまで少しあるので先に行ってもらう、
左手で合図しながら右側をすり抜けていく。
 スローインファーストアウト文字通りのコーナーワーク
クリッピングを超えてからパワースライド気味に抜けていく
次ぎの左コーナーまでのほんの少し、一瞬パワーリフトして
そのままフロントを沈めブラインドコーナーに切り込んでいく
まるで、GPライダー並の走りだ・・・・・
 噂で聞いた事が在る、国際級のライダーが気晴らしにここに
やって来ては、ハードライディングを見せつけて帰ってゆくと・・
彼ももしかしたら・・・
 ここ神戸近辺には、有名な元二輪選手が何人かいる。
金谷秀夫・・1972年世界GP250ccクラスランキング2位
がしかし、知る人ぞ知るこの年の真のチャンピオン、そう当時の
日本バッシングの影響で最終戦でチームオーダーが出なければ、
彼は、間違いなくチャンピオンになっていたはずなんだ。
さぞかし悔しかったであろう。この年の優勝は、フィンランド人、ヤーノ・サーリネン同じヤマハに乗るプライベートライダーだった。その後彼は、当時を知るジャーナリストからチャンピオンと
同様に扱われたと聞いている。

徳野政樹・・1985年ワインガードナーともに鈴鹿8字間耐久
ロードレース優勝、このときの優勝候補は、ケニーロバーツ&平
だったのですがゴール前のマシントラブルでリタイヤ、キング
ケニーに勝った男なのである。
カワサキからホンダに移籍前に(未発表の時)モトクロスコースに
遊びに来た彼に出会っている。その時のバイクは、ホンダであった

清原明彦・・ここで語るよりここを↓
      http://www.proshop-kiyo.com/aboutkiyo.html

と一昔も二昔も前の選手ばかりだが、色んな逸話をどこそことなく
聞かされた。

 山の海側から真中に道が進んで小さなS字の後少し上りの
直線、次ぎに右コーナーからまたゆるいのぼり、ここのコーナーの
アウト側にちょっとした広場が在る、夕暮れ以降のカップルに
とっては、格好の休憩スポットである。・・と同時に覗きの
スポットとしても有名らしい。
 このあたりから幾つかのコーナーを抜けると、六甲山牧場が
近づいてくる。あちらこちらに羊注意の看板が目に付く、
奴らは、しばしば脱走するのである。
 山の斜面に出来た起伏の在るこの牧場は、チーズ工場の見学や
出来たてミルクで作ったアイス、そして神戸の街が見える景色が
売りだ。只気をつけないと行けない事が在る、それは・・・・
羊の糞そして、お弁当だ! レジャーシートをひいてお弁当を
広げると、奴らは、音もなく近づき招かざる客としてその輪の中に
団体でやってくるのである。お気をつけあそばせ!!

 蛸壺のようなコーナーを抜け直線、左右にコーナーを抜け
直線、90度の右コーナーの後ゆるい登りの直線、左に曲がって
暫く行くとその先は、表六甲ドライブウェイに続くT字路
一旦停止のその横にさっきのトライアンフが休んでいた。
 私と彼女も調子に乗って結構責めていたので、お互い
だいぶ熱くなっているようだ。
 一旦進路を南の表六甲ドライブウェイに鼻先を向けて山を下る。
ナグラセカのコーナーを思い起こさせるような、タイトな
下りコーナーを抜け一旦右手に在る鉢巻の休憩所に車を入れる。
 いつものホットドッグ屋が来ている。喉が乾いたので缶コーヒー
を一本買ってベンチに座ってのんびりと伸びをする。
「さて、これからどうしますかね、お嬢さん?」・・・つづく


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